シェリアス



「アスベル、あなたかなり髪伸びてきたわよ」
「え、え!?ほ、ほんとか」
「ふふ、嘘言ってどうするのよ、そろそろじゃない?」
「そ、そうかな………へ、変じゃない?」
「何言ってんの似合ってるわよ、ほんと恋する乙女は大変ね」
「う、うるさいな!」



あの人の髪と同じぐらいまで伸びたとシェリアは言う。あの人と同じストレートにしたかったけれど天性の癖っ毛だけはどうにも治らなかった。この髪が伸びきった時、彼に告白をしようとそう決めて、その手助けをしてくれたのはいつだってシェリアだった。シェリアには迷惑を沢山かけて、そのぶん沢山助けられた。今の自分があるのはシェリアのおかげだと言っても決して過言ではなかった。その想いを胸にシェリアに思いきり抱きつくと、シェリアは穏やかに笑って、俺の背中を優しく叩いた。


「シェリア………今まで相談に乗ってくれてありがとう………」
「何言ってんの、幼馴染みじゃない私達、気を使う必要なんてないのよ」
「でも俺、シェリアのおかげでここまで女らしくなれたんだと思う、昔の俺だったら全然………」
「アスベル、貴女は最初から可愛かったわ、自信を持っていいのよ私が保証する、貴女の一番近くにいたの、誰だと思ってんのよ………だから………頑張って」
「うん………うん!シェリア、いってくる!」




遠くなるアスベルの後ろ姿を見つめながらシェリアはそっと溜め息を吐きだした。私は、嘘つきだ。



「全然似合ってないわその髪」


アスベルに似合うのは首までで切り揃えられた髪だ。


「その格好だって可愛くない」


そんなワンピース、可愛くない。アスベルに似合うのは白を基調としたズボンだ。


「化粧なんかしちゃって馬鹿みたい」


貴女はそんなことする必要がないほど美しいのに。



「どうしよう、アスベルが取られちゃう」



彼女の一番が自分ではなくなってしまう。怖い。彼女に一番近かったのは誰でもない、私だ。私を小さな時から守ってくれた王子様。その王子様は私ではない別の人に恋をした。そしてあろうことか彼女は私に相談を持ちかけたのだ。あの人に釣り合うような、女性になりたい。彼女に一番近い私が、彼女からの相談をむげにできるはすなんてなかった。全て、自分の自業自得なのに。





「いっそこっぴどくふられちゃえばいいのに」





こんなことを思ってしまう私は、誰よりも最低だった





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